R6年度 技術士(化学部門)試験対策

技術士取得の最終的なゴールはなんでしょうか?

私は、技術士試験に合格することではなく、この資格を利用し「技術士として活躍」することと考えます。技術士試験合格は単なる通過点に過ぎません。本年度通過すれば良いだけです。そう考えると楽しく勉強できるのではないでしょうか? 以下化学部門に特化した試験対策についてまとめました。ストレスのかからない範囲で準備することをお勧めします。


<二次試験>

1.R5年度技術士(化学部門)二次試験結果

R5年度の二次試験(化学部門)の統計数字は以下の通りです。

申込者数:150人(100%)

受験者数:129人(86%:対申込者数)

二次筆記試験通過者数:27人(18%:対申込者数)

合格者:24人(16%:対申込者数)

*二次筆記試験の通過者は18%(過去5年間:15~20%)と非常に困難な資格です。

*口頭試験で3名の方が残念な結果となっています。口頭試験で重要となる受験申込書をしっかり記載し、想定問答集作成による試験対策を十分されることをお勧めします。

2.R6年度試験大日程

大日程を以下に示します。内容が変更する場合がありますので、詳細は日本技術士会のHPにてご確認ください。

申込書提出期間:R6年4月1日ー4月15日

筆記試験日:R6年7月15日

筆記試験合格発表:R6年10月

口頭試験実施期間:R6年12月~R6年1月

合格発表:R6年3月

筆記試験は7月15日です。本腰を入れて試験対策をされることをお勧めします。

化学部門の受験用参考資料は、ほとんどないのが実情です。試験対策に関するご質問その他ありましたら「お問合せ」からご連絡ください。

3.筆記試験対策

<論文記載事例>

二次試験で最も重要な科目は、必須科目Ⅰです。中でも(1)の「多面的な観点からの課題の抽出」は、それを受けての(2)~(4)の記述となるため、注力して対策したい内容です。

例えば、R3年のⅠ-2の設問「脱炭素社会化のための化学産業の貢献」では、どのような課題を抽出すれば良いのでしょうか?

()内に記載した観点から、化学産業の技術者の立場で以下を挙げてはいかがでしょうか?

(1)-1 化石資源使用量の削減(地球温暖化対策のニーズの高まり)

(1)-2 再生可能エネルギーの推進(炭素資源に替わるエネルギー源の安定確保)

(1)-3 炭素循環技術の開発(化学産業の技術シーズ)

それぞれ、現状→問題点→課題→課題の裏付け(重要ポイント、事例、化学産業の貢献•役割等)の順番で論述すれば、一般論ではなく説得力ある解答となります。

以下具体的な参考事例を紹介します。

(1)-1 化石資源使用量の削減

日本は1次エネルギー供給量の90%を化石資源に依存しており、化学産業のエネルギー消費量は製造業中第1位(40%)である(経産省統計'21)。地球温暖化防止というニーズの高まりの観点からも、「化石資源使用量の削減」が化学産業の喫緊の課題である。先進的省エネルギー投資促進支援事業の助成金(資源エネ庁)を活用し、不安全リスクの高い老朽化した製造プロセスを皮切りに省エネ化を積極推進する必要がある。

このパラグラフは、以下の工夫を織り込んでいます。

①公的機関の公表数字により現状や問題点を明確にしている。

②観点は、設問の「地球温暖化防止というニーズの変化」とし、設問からのズレを防止している。

③課題は、問題点から抽出された化学産業として特に重要な内容としている。

④関係省庁の方針(省エネ)等具体例を課題の裏付けとして挙げ、脱一般論を図っている。

ご質問その他ありましたら、本HPの”お問合せ”から連絡ください。

<筆記試験直後の留意点>

①自分への賞賛と感謝

技術士試験対策に充てられる時間を捻出し、試験日当日まで最善を尽くした自分自身を褒めてあげましょう。また、支えてくれた全ての人々に感謝しましょう。

②Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの復元論文作成(必ず試験日の翌日までに実施)

合格の場合:口頭試験で試験内容について質問されることがあり、復元論文が重要となります。 不合格の場合、開示請求により判明した点数と復元論文を見比べてどこが悪かったかを明確にするために非常に参考になります。

試験終了後、疲労がマックスとなりますが、復元論文は必ず作成することをお勧めします。

4.口頭試験対策

技術士になるための最終的な試験である口頭試験の”注意事項”や”情報”を

https://petaisaku.amebaownd.com/posts/32341582

https://petaisaku.amebaownd.com/pages/5242530/page_201602191746

にアップしていますので、ご確認ください。

5.二次試験学習方法

以下、参考までに学習方法をまとめました。

3.1 化学部門(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)の過去問R1-5年度分をじっくり読む。

https://www.engineer.or.jp/c_categories/index02022225.html

3.2 何を勉強すれば効果的かを自分なりに把握する。

過去問をじっくり読むと設問の共通点が浮き彫りになってきます。

設問から、勉強のテーマは2つです。

①化学産業の課題

日本の化学産業の課題はどこにあり、どうすれば今後とも継続して発展できるのか?

③化学産業の貢献

化学産業が、持続可能な社会実現を考慮しながら国民経済の発展に貢献できることは何か?

①、②を理解する上で、人・経済・社会環境・安全・情報の切り口から以下の参考書や文献を読むことをお勧めします。

3.3 参考文献

①新技術開発センターの解答事例集(過去5年分) 

R5年度:

https://pe.techno-con.co.jp/bumon_5/3227.html

R4年度:

https://pe.techno-con.co.jp/bumon_5/3167.html

②化学と工業 巻頭文(過去3年分)

https://www.chemistry.or.jp/journal/chemical-industry/2024/

③キーワード「化学産業の課題」でネット検索

(ネット検索して通読。特に経済産業省の資料が勉強になります。)

3.4 セミナー参加

・新技術開発センターの「合格一直線コース」

https://pe.techno-con.co.jp/item/4905.html

経済的な問題(高価?)もありますが、やはり、「合格一直線コース」がお勧めです。私も受講し非常に勉強になりました。異業種の親友も沢山できました。


<一次試験>

1.R5年度試験結果

R5年度の一次試験(化学部門)の統計数字は以下の通りです。

申込者数:226人(100%)

受験者数:173人(77%:対申込者数)

合格者数:112人(50%:対申込者数)

受験申込みをされたにもかかわらず、受験を断念した方が1/4もいる非常に難しい試験です。

2.R6年度試験大日程

大日程を以下に示します。内容が変更する場合がありますので、詳細は日本技術士会のHPにてご確認ください。

申込書提出期間:R6年6月12日ー6月26日

試験日:R6年11月24日

合格発表:R7年2月

試験日は11月24日です。本腰を入れて試験対策をされることをお勧めします。

3.一次試験対策

試験は毎年あり何度でもチャレンジできます。

”化学を基礎から学べる良い機会”と考え、新たな気持ちで勉強し直しても良いかもわかりません。自分の仕事の中でも応用可能な新しい知識を習得できる可能性もあります。

専門科目(化学)の対策は、やはり過去問学習が最も効果的です。私はR1から現在までの全35問の解答とその解説、参考文献などをまとめています。その一部をブログに掲載していますので参考になさってください。

以下が、過去問題から抽出した頻出問題です。各分野7-8問、合計35問から構成されています。頻出問題については、キーワード集としてまとめ、内容を理解しておくことをお勧めします。二次筆記試験のⅡ-1の対策にも活用できます。

<有機化学>

①有機反応(合成の基本反応、人名反応:カニツアロ反応,マイケル反応、鈴木-宮浦反応などDiels-Alder反応、SN-1,2反応,E-1,2反応)

②電子論(オルト/パラ配向性、電子吸引/供与基)

③異性体(キラル中心、鏡像・構造異性体)、④芳香族性

⑤炭素-炭素結合の導入を目的とした反応、試薬(Grignard試薬、Wittig反応、Diels-Alder反応など)

⑥有機化合物の分析方法(IR,NMR,UV,MS)

<燃料・潤滑油>

①一次エネルギー(構成比、種類)

②石油(製品、精製)

③石炭(種類、用途)

④燃料(ガソリン,オクタン/セタン価)

⑤潤滑油(種類、基材、添加剤)

⑥SDGs関連(再生可能E,水素,カーボンニュートラル)

<高分子化学>

①ポリマーの合成(構造式,重合様式,触媒、不斉炭素)

②熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の種類と特徴(含結・非晶性、機能性高分子)

③ゴムの種類と特徴

④分子量(数、重量、測定法)

⑤高分子物性(粘弾性,熱的挙動)

<無機化学・セラミックス>

①無機材料・製品の種類、製法、用途、機能

②無機化合物の結晶構造(含欠陥構造)

③半導体の構造と特徴

④状態図(二成分系、気液平衡)

⑤セラミックスの種類、用途、製法(焼結)

<化学プロセス>

①各種物理化学法則(状態方程式PV=nRT,燃焼,レイノルズ数,相対湿度)

②熱力学(総括伝熱係数,熱化学方程式,熱伝導)

③化学プロセスの基礎(反応速度,半減期,溶解,蒸留,分離,物質収支)

*計算問題を全て捨てるのは得策ではない。極めて簡単に解けるものもある。1問の解答に20〜30分もかかるものもあるから、それらは早く見分けて避けるのが得策。

ご質問その他ありましたら、”お問合せ”から連絡ください。特に、新技術開発センターのセミナーや参考書は、割引価格が適用される場合がありますので是非ご相談ください。

4.一次試験当日の注意事項

特に7と9が重要です。

1.当日は早めに会場に行きましょう。早めに行って、自分の作成した資料を見返しましょう。直前で勉強したことは絶対に忘れません。

2.持ち込みOKのもの以外は持ち込めません。鉛筆と消しゴムは2つ以上持参。

3.その他、私の場合は、「セーター1枚。使い捨てスリッパ。水ペットボトル。」を持参しました。使い捨てスリッパは足が楽になって試験中快適です。

4.試験が終わったら、トイレは即行きましょう。会場によっては、すごく混みます。

5.昼食は軽め。沢山食べると午後眠くなります。

6.解答用紙への記入は最後。

7.設問で規定された解答数以上は絶対に解答しない。

8.時間のかかる計算問題は最後にトライ。

9.自分の解答を問題用紙に確実に記入し持ち帰りましょう。正答は2週間程度で技術士会から発表されます。自己採点ではありますが、合否が2週間後でわかります。

10.最後まで諦めない。問題を何度も真剣に読むと答えが閃くこともあります。


技術士になると別世界が広がります・・・

”最後まであきらめない”、”全員味方”です。

私は、GSTKK「技術士試験対策研究会(化学部門編)」のメンバーです。参考になる資料や情報を掲載していますので、こちらも参考になさってください。



前野聖二 技術士(化学部門) 導電性カーボンブラック

”技術士化学部門”を中心とした様々な技術課題の解決業務をおこなっています。専門は、導電性カーボンブラック、機能性炭素材料、樹脂・塗料複合化、高導電化・高分散化技術です。また、人材育成/衛生関連の知識や経験を応用し「技術部門におけるメンタル強化策」の提案など”人財”開発業務もおこなっています。微力ながら皆様のお力になれるよう努力します。

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